EC・DtoC歴10年以上。アパレル・消費財メーカーで、自社ECの立ち上げ・改修から楽天・Amazon・Yahoo!などモール多店舗運営、新規DtoCブランドの立ち上げまで現場で担当してきました。社名は伏せていますが、現場で詰まったことや判断の中身は、できるだけリアルに書きます。
この記事では、自社ECの改修プロジェクトで実際に起きたことを書きます。「立ち上げ・リニューアル系プロジェクト」に関わったことがある人なら、あるあると思う話です。
結論:EC立ち上げ・改修で本当に大変なのは「技術」ではない
自社ECのリニューアルプロジェクトで最も消耗したのは、コードでも設計でも構成でもありませんでした。要件定義の崩壊でした。
「やりたいこと」が止まらない。経営層が会議のたびに追加する。メンバーは「これもできる?」と際限なく積み上げる。最終的に収拾がつかなくなった——これが自社ECプロジェクトの実態です。
何が起きたか:要件定義の膨張
プロジェクトを走らせ始めた当初、要件定義はそれなりに固まっていました。
ところが進めるうちに、経営層から「これもできる?」が次々追加されていきました。会議のたびに「やりたいこと」が更新される。メンバーも「ここもこうしたい」と後から積み上げてくる。
固めたはずの要件が、会議ごとに変わっていくんです。
EC担当者なら経験があると思いますが、これはプロジェクトの設計の問題ではなく、関係者の「解像度がバラバラなまま走り出した」という構造的な問題です。経営層はビジネス要件を語り、エンジニアは技術要件を語り、現場担当は運用要件を語る。それぞれが正しいことを言っているのに、話が噛み合わない。
どう対処したか
やりたいことを切り捨て、やらなきゃいけないことに集中
まず「やりたいことリスト」から手を離すことにしました。関係者全員の「こうしたい」を全部取り込もうとすると、プロジェクトは終わりません。
やらなきゃいけないことだけに絞る。そのための判断基準を「公開後に最低限動くか」に置きました。
経営層を動かすのは論理ではなく見た目の納得感
経営層への説明で、最も効かなかったのは「バックエンドの工数が増える」という話でした。技術的な説明は伝わらない。
代わりに機能したのは、フロント側の見た目を調整して「こういうものができます」と見せることでした。バックエンドの要件は静かに絞り込みながら、表側は経営層が納得する形に整える。これがプロジェクトを前進させる唯一の方法でした。
バックエンドの要件を静かに絞り込む
表側では経営層の要求を受け入れながら、バックエンドでは静かにスコープを絞る。これは正直な話ではないかもしれないけど、プロジェクトを動かし続けるための現実的な判断でした。
理想の要件定義で完璧なものを作ろうとすると、プロジェクトは止まります。「今動くもの」を作りながら、後から改善する。EC立ち上げ・改修の現場では、これが実際の進め方です。
教訓:EC立ち上げで覚えておくべきこと
関係者全員の解像度がバラバラなまま走り出すと要件は必ず膨張する
これは避けられない。問題は膨張すること自体ではなく、膨張したときに何を切り落とすかの判断軸を持っていないことです。
最初に「このプロジェクトで絶対に達成するもの」と「あればいいもの」を分けておく。そして「あればいいもの」はフェーズ2以降に回す勇気を持つことが重要です。
経営層を説得する言語は「見た目」
技術の話は刺さらない。画面のモックアップ、完成イメージ——これが経営層を動かします。バックエンドの複雑さを説明するより、「こういうものが出来ます」を見せることに時間を使った方が効率的です。
立ち上げ経験者はバックエンドの話ができる人材として評価される
EC立ち上げ・改修を経験した人材は、転職市場で差別化できます。特に「バックエンドの実情を把握しながら、フロント側の施策も動かせた」という経験は、EC事業を任せられる人材として評価されます。
EC担当としての転職に関心がある方は、こちらも参考にしてください。
→ EC・DtoC担当者の転職でおすすめのエージェント比較|10年現場で見た選び方
この記事を書いた人
EC転職野郎
EC・DtoC歴10年以上。アパレル・消費財メーカーで、自社ECの立ち上げ・改修から楽天・Amazon・Yahoo!などモール多店舗運営、新規DtoCブランドの立ち上げまで現場で担当。店長・エリアマネージャーを経て通販事業部シニアマネージャー、その後消費財メーカーでDtoC新規事業のチームリーダー・ECプロモーションチーム担当課長。
社名は伏せていますが、現場で詰まったことや判断の中身は、できるだけリアルに書きます。
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