EC担当者の仕事は、外から見ると「デジタルで効率的」「在宅でできそう」というイメージがあるかもしれません。実態は違います。
10年以上EC・DtoCの現場にいた立場から、EC業務の本当に大変なところを正直に書きます。きれいごとなしで。
EC業務が大変な理由
①業務範囲が広すぎる
EC担当者の業務範囲は非常に広い。商品登録・ページ改善・広告運用・メルマガ・SNS・在庫管理・カスタマーサポート・物流管理・数値分析・システム管理——これらを少人数で担当することが多い。
特に中小規模の会社では「EC担当者=EC全部やる人」になりがちです。フロントもバックエンドも、デジタルもアナログも、一人でこなすことが求められます。
②モールのルール変更・アルゴリズム変更への対応
楽天・Amazon・Yahoo!などのモールは、定期的にルールやアルゴリズムを変更します。ある日突然「この表現はNG」「この機能が廃止」「検索アルゴリズムが変わって売上が激変」ということが起きます。
自分では何もしていないのに、売上が大きく変動する。これがモール依存のEC運営の最大のリスクであり、精神的にもしんどいポイントです。
③経営層との温度差
EC担当者が最もストレスを感じる場面のひとつが、経営層との温度差です。
自社ECをリニューアル改修したとき、要件定義が一度固まったのに経営層から「これもできる?」が止まらず収拾がつかなくなった経験があります。経営層はフロントの見た目しか気にしないため、バックエンドの複雑さや工数が伝わらない。
「なんでできないの?」という言葉は、EC担当者なら一度は言われたことがあるはずです。
④セール・イベント前の過酷さ
楽天スーパーセール・Amazon プライムデー・年末商戦——大型セールやイベントの前後は業務量が一気に増えます。
在庫の積み増し、ページの更新、クーポン設定、広告の調整、問い合わせ対応の増加。年4回のセールサイクルを回し続けるプレッシャーは、外からは見えにくい大変さです。
⑤カスタマーサポートの精神的負荷
ECのカスタマーサポートは、担当者のメンタルを消耗させます。
配送遅延・商品の破損・注文ミス・返品対応——お客さんからのクレームに毎日対応することは、慣れていても消耗します。特に繁忙期は問い合わせが急増して、通常業務との両立が難しくなります。
⑥年中無休のプレッシャー
ECサイトは年中無休です。土日・祝日・深夜も注文は来ます。自分が休んでいる間にトラブルが起きても、対応を求められるケースがある。
店舗担当者が閉店後は基本的に仕事から離れられるのと違い、EC担当者は「サイトが落ちていないか」「急なクレームが来ていないか」という緊張感が常にあります。
EC業務の大変さをどう乗り越えるか
①優先順位を徹底する
業務範囲が広いEC担当者が最初に覚えるべきスキルは「優先順位をつけること」です。
全部を完璧にやろうとすると破綻します。「今週やらなければならないこと」「今月やること」「いつかやること」を分けて、目の前のことに集中する習慣が重要です。
自社EC改修で要件が膨張したとき、「やらなければならないことだけに絞り込む」という判断で乗り越えた経験が、この優先順位の大切さを実感させてくれました。
②経営層には「見た目」で説明する
経営層にバックエンドの複雑さを理解してもらうのは難しい。正論を言っても伝わらないことが多い。
効果的だったのは、経営層が気にする「フロントの見た目」で進捗を伝えることです。技術的な説明より画面のビジュアルで報告する方が、経営層の理解を得やすい。これは経営層を操作しているのではなく、相手が理解できる言語で話しているということです。
③モール依存を減らす設計を持つ
モールのルール変更・アルゴリズム変更に翻弄されるストレスを減らすには、自社ECとCRMを育てて、モール依存を徐々に下げる設計が重要です。
DtoCで顧客データを自社の資産にすることで、モールに左右されない事業基盤が作れます。
④大変さは「経験値」として価値がある
EC業務の大変さは、転職市場では「経験値」として高く評価されます。
多店舗運営の同時管理・DtoC立ち上げのゼロからの苦労・要件定義の崩壊と立て直し——これらの経験は、同じ苦労をしたことがある採用担当者から見ると「本物の経験者だ」と分かります。
きつい経験ほど、面接で話せる価値あるエピソードになります。
EC業務が向いている人・向いていない人
向いている人
- 幅広い業務を同時にこなすマルチタスクが苦にならない人
- 数字を見て仮説を立てて動くことが好きな人
- 変化に柔軟に対応できる人
- エンドユーザーの気持ちを想像することが好きな人
向いていない人
- 一つの専門領域を深く極めたい人(EC担当は広く浅くなりがち)
- 安定したルーティン業務を好む人
- 数字よりクリエイティブに振り切りたい人
きつくても続ける価値はあるか
EC業務はきつい面もありますが、市場価値が高まり続けている分野です。
10年後もECへの投資は増え続けると予測されています。デジタルとオフラインを両方理解したEC担当者への需要は高まり、経験を積むほど市場での価値が上がります。
「きつい」と感じているなら、今の環境が合っていないだけで、EC担当者そのものが向いていない可能性は低いかもしれません。転職で環境を変えることで、同じEC業務でも全然違う働き方ができることがあります。
EC担当者の転職・キャリアについてはこちらも参考にしてください。
→ EC・DtoC担当者の転職でおすすめのエージェント比較|10年現場で見た選び方
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