EC・DtoC歴10年以上。新規DtoCブランドの立ち上げを担当したとき、「ユーザーが0人」というゼロスタートから、どうやって購買客を作っていったか。懸賞企画・アウトレット施策・CRMの3つを組み合わせた実際の話を書きます。
この記事は転職面接でも複数社の面接官に刺さった施策の話でもあります。EC・DtoC担当者として「自分の経験をどう語るか」に悩んでいる人にも参考になるはずです。
F0・F1とは何か
まず言葉を整理します。
- F0:一度も購入したことがない新規登録ユーザー
- F1:初めて1回購入したユーザー
- F2以上:2回以上購入したリピーター
DtoCの立ち上げ期に最も重要なのは、F0をいかにF1に転換するかです。F1になったユーザーは、F2・F3へのリピート率が高く、ブランドの収益基盤になります。逆にF0のまま放置すると、獲得コストだけがかかって終わります。
課題:アカウントが0件のゼロスタート
DtoCブランドを立ち上げたとき、最初に突きつけられた現実はユーザーアカウントが0件でした。ECサイトを作っても、届ける相手がいない。メルマガを送る先もない。SNSのフォロワーもいない。
完全なゼロから、F0ユーザーを集めて、F1に転換する。この2ステップを同時に設計する必要がありました。
F0獲得施策:懸賞企画
設計の考え方
広告費をかけてゼロから認知を作るのは、立ち上げ期には非効率です。まずリアルの接点(店舗)でブランドに触れた人をデジタルに繋ぎ止める設計にしました。
ブランドの立ち上げと同時に、喫茶と物販が一体になった店舗を出店。その店舗でLINE登録と会員登録を促す懸賞企画を実施しました。
懸賞企画の中身
景品:自社コーヒー(賞味期限が近い在庫を活用)
応募条件:新規会員登録のみ(購入不要・ハードルを最低限に設定)
告知場所:公式ECサイト・店舗内
景品に賞味期限の近いコーヒーを使ったのには理由があります。どうせ廃棄になる在庫を有効活用できる、かつコーヒーを実際に手に取って飲んでもらうことで商品認知にもなる。コスト削減と広告効果を同時に取れる設計です。
結果
- 月間応募数:約600件
- 月間新規会員獲得数:約300件
- 既存会員の重複応募:約300件(全体の半数)
この懸賞企画を1年以上継続しました。毎月300人の新規会員が積み上がり続けたため、やめる理由がなかったからです。
F0→F1転換施策:アウトレットコーナーの設置
「懸賞が好きな人」の特性を活かす
懸賞企画で獲得したF0ユーザーの特性を分析すると、景品目当てのユーザーが一定数含まれていました。こうしたユーザーは通常価格の商品には反応しにくい。一方で、割引品・福袋・アウトレット商品との親和性が高いことが分かりました。
アウトレット化の背景
このブランドのコーヒーは、食品業界の「3分の1ルール」の制約を受けていました。賞味期限の残りが3分の1を切った商品はスーパー等への出荷ができないというメーカー側のルールです。これまではそのまま廃棄していました。
廃棄コストが年間数千万円規模になっていることを社長が認識していて、「どうにかならないか」という相談がありました。
前職で同様のアウトレット施策を経験していたため、「自社ECでアウトレット販売すれば廃棄を売上に変えられる」と提案。サイト立ち上げから半年後にアウトレットコーナーを設置しました。
アウトレットコーナーの設計
- ECサイトのトップページにアウトレットコーナーへの入口を設置
- 専用の商品ページを作成
- 価格設定のルールを社内で決定(廃棄コストより売れれば利益が出る計算)
F0ユーザーへの訴求方法
アウトレット商品をF0ユーザーに届ける手段は3つ使いました。
- メルマガ:定期的に福袋・割引品・アウトレット商品を案内
- LINE配信:タイムリーな在庫情報を配信
- サイト内導線:トップページのアウトレットコーナーから自然に流入
結果
- アウトレットコーナー設置後の初年度:年間約2,000万円の売上
- 廃棄コストの大幅削減(年間数千万円規模)
- 社長から「これは助かる」と評価
廃棄予定だったものが売上になり、廃棄コストも削減された。一石二鳥の施策になりました。
数字で見るF0→F1転換の全体像
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 月間懸賞応募数 | 約600件 |
| 月間新規会員獲得数 | 約300件 |
| メルマガ開封率 | 約30% |
| F0→F1転換率 | 約5% |
| 初回購入平均単価 | 約4,000円 |
| 月間購買人数(試算) | 約15人 |
| アウトレット年間売上 | 約2,000万円 |
転換率5%は低く見えるかもしれませんが、毎月300人のF0ユーザーが積み上がるため、時間が経つほど購買母数が増えていきます。懸賞企画で獲得したF0ユーザーは「いつか転換してくれる可能性がある資産」として管理する考え方が重要です。
この施策が転職面接で刺さった理由
転職活動で5社の面接を受けたとき、この懸賞企画×アウトレット施策の話をするたびに面接官の質問が増えました。
面接官が評価したのは「ゼロからユーザーを集めた方法」だけではなく、**「課題を見つけて、考えて、最後まで実行したプロセス」**でした。
面接官は質問するネタを探しています。具体的な施策のエピソードを出すことで面接官が深掘りしやすくなり、結果として自分の経験を詳しく語れる場が生まれます。「F0→F1転換施策としてアウトレットを活用した」という話は、「それはどういうことですか?」と聞きやすい構造になっていたのだと思います。
まとめ:F0→F1転換で重要な3つの考え方
①F0ユーザーを「無駄」と思わない 景品目当てのユーザーも、適切な訴求をすれば購買に転換する可能性があります。時間軸を長く持つことが重要です。
②ユーザーの特性に合わせた商品を当てる 懸賞好きのユーザーには割引品・アウトレット品が刺さりやすい。セグメントに合わせた訴求設計が転換率を上げます。
③コスト削減と売上創出を同時に設計する 廃棄予定の在庫を景品に使い、アウトレットとして販売する。社内の課題(廃棄コスト)をEC施策で解決する視点は、マネージャーとして高く評価されるポイントです。
EC・DtoC担当者として転職活動をするなら、こうした「ゼロから作った経験」は市場で高く評価されます。自分の経験をどのエージェントに、どう伝えるかはこちらの記事も参考にしてください。
→ EC・DtoC担当者の転職でおすすめのエージェント比較|10年現場で見た選び方
この記事を書いた人
EC転職野郎
EC・DtoC歴10年以上。アパレル・消費財メーカーで、自社ECの立ち上げ・改修から楽天・Amazon・Yahoo!などモール多店舗運営、新規DtoCブランドの立ち上げまで現場で担当。店長・エリアマネージャーを経て通販事業部シニアマネージャー、その後消費財メーカーでDtoC新規事業のチームリーダー・ECプロモーションチーム担当課長。
社名は伏せていますが、現場で詰まったことや判断の中身は、できるだけリアルに書きます。


