新規DtoCブランドの立ち上げを担当したとき、最初に突きつけられた現実はユーザーアカウントが0件だということでした。ECサイトを作っても届ける相手がいない。認知もない、顧客データもない、メルマガを送る先もない。
この記事では、その完全なゼロから売上を作るまでの全工程を書きます。店舗出店・LINE獲得・データ一本化・CRM稼働まで、実際にやったことをそのまま公開します。
DtoC立ち上げの最初の壁は「届ける相手がいない」こと
ECサイトを作ることは難しくありません。難しいのはその先です。
モールに出店する場合は、楽天やAmazonにすでにユーザーが集まっています。そこに出品すれば、検索されて見つけてもらえる可能性がある。一方、DtoCは自社サイトへ自分でユーザーを連れてこなければなりません。
最初のユーザーを誰が、どこから、どうやって連れてくるか。ここの設計が甘いと、いくら良いサイトを作っても誰にも見られないまま終わります。
STEP1:まずリアルの接点を作る
オンラインだけで始めない
このブランドはオンラインとオフラインを組み合わせた事業設計にしました。ECだけで始めると、認知ゼロ・ユーザーゼロのまま広告費だけが消えていく。まずリアルの場所を作って、そこでブランドに触れた人をデジタルに繋ぎ止める順番にしました。
喫茶×物販の店舗を出店
最初に作ったのは、喫茶と物販が一体になった店舗です。商品(コーヒー)を実際に飲んで体験して、気に入ったらその場で買える・後でオンラインでも買える設計にしました。
店舗の役割はただ売ることではなく、ブランドへの共感を持った人を作る場所です。広告で集めた無関心な人より、店舗で体験して気に入った人のほうが、その後のEC購買につながりやすい。
STEP2:店舗でLINE登録と会員登録を獲得する
懸賞企画の設計
店舗に来た人をデジタルに繋ぎ止めるため、会員登録を条件にした懸賞企画を実施しました。
応募条件:新規会員登録のみ(購入不要) 景品:自社コーヒー(賞味期限が近い在庫を活用) 告知:公式ECサイト・店舗内
景品のハードルを下げることで応募しやすくしました。「購入しないと応募できない」にすると、まだブランドを信頼していない段階のユーザーには届きません。まず登録してもらうことを最優先にしました。
二段構えの導線
- 会計時にスタッフが声がけ:接客の流れで自然に案内
- テーブルにQRコードを設置:飲食中・待ち時間に目に入る
この二段構えにしたことで、声がけを聞き逃した人もQRコードで拾えます。
結果
- 月間応募数:約600件
- 月間新規会員獲得数:約300件
- 1年以上継続
毎月300人の新規会員が積み上がり続けました。高額な広告費をかけずに、すでにブランドに興味を持った人だけを獲得できたのがこの設計の強みです。
STEP3:LINEとEC会員データを一本化する
別々に管理すると何が起きるか
LINE登録者とEC会員を別々のシステムで管理すると、同じ人が2つのデータに分かれて存在することになります。
「LINEは登録しているがECでは買ったことがない人」「ECでは買っているがLINEは未登録の人」が混在したまま施策を打つことになる。配信の精度も顧客理解の深さも、どちらも中途半端になります。
会員データベースで一本化
LINE IDとEC会員データを会員データベースで統合しました。これにより「この人はいつ店舗に来て、何を買って、どのくらいの頻度でリピートしているか」が一気通貫で見えるようになりました。
一本化を最初からやる理由:後から統合しようとすると、データの名寄せだけで膨大な工数がかかります。立ち上げ期に設計を入れるかどうかで、その後の運用効率が大きく変わります。
STEP4:CRMで顧客を育てる
DtoCの強みは「顧客を直接知れること」
モールに出店している限り、誰が買ったかはプラットフォーム側のデータで、自分たちには渡ってきません。自社ECとLINEを一本化することで初めて、顧客データが自社の資産になります。
実際にやったCRM施策
データ一本化後、購買履歴・行動データに基づいたコミュニケーションができるようになりました。
ギフト需要に合わせた配信 コーヒーはギフト需要が高い商材です。父の日・母の日・クリスマス・お中元・お歳暮など、贈り物として選ばれるタイミングが年間を通じて複数あります。ギフト時期の2〜3週間前にLINEとメルマガで案内することで、購買タイミングに合わせた訴求ができました。
購入後のフォローメッセージ 初回購入後にフォローメッセージを送ることで、リピート購買への橋渡しをしました。「使ってみてどうでしたか」「次はこんな商品もあります」という自然な流れで次の購買につなげます。
休眠顧客への再アプローチ 一定期間購買がない顧客に対して、割引クーポンや新商品情報を配信しました。休眠顧客はすでにブランドを知っているため、完全な新規より反応率が高い傾向があります。
DtoC立ち上げの全工程まとめ
STEP1:店舗出店(リアルの接点を作る)
↓
STEP2:懸賞企画で会員登録を獲得(月300人)
↓
STEP3:LINEとEC会員データを一本化
↓
STEP4:CRMで顧客を育てる
・ギフト時期の配信
・購入後フォロー
・休眠顧客への再アプローチ
DtoC立ち上げで最も重要な3つの考え方
①オンラインだけで始めない 認知ゼロの状態でECだけ作っても誰も来ません。リアルの接点でブランドへの共感を作ってから、デジタルに繋ぎ止める順番が重要です。
②データは最初から一本化する LINEとEC会員を別々に管理すると、後から統合するコストが膨大になります。立ち上げ期の設計が、その後の運用効率を決めます。
③顧客データは自社の資産にする モール依存では顧客データは自社のものになりません。DtoCの本質的な強みは、顧客を直接知って、直接コミュニケーションできることです。
DtoC立ち上げの経験は、転職市場で高く評価されます。特に「ゼロから作った経験」は希少です。自分の経験をどのエージェントに、どう伝えるかはこちらの記事も参考にしてください。
→ EC・DtoC担当者の転職でおすすめのエージェント比較|10年現場で見た選び方
この記事を書いた人
EC転職野郎
EC・DtoC歴10年以上。アパレル・消費財メーカーで、自社ECの立ち上げ・改修から楽天・Amazon・Yahoo!などモール多店舗運営、新規DtoCブランドの立ち上げまで現場で担当。店長・エリアマネージャーを経て通販事業部シニアマネージャー、その後消費財メーカーでDtoC新規事業のチームリーダー・ECプロモーションチーム担当課長。
社名は伏せていますが、現場で詰まったことや判断の中身は、できるだけリアルに書きます。


