自社ECのリニューアル改修を担当したとき、最初に詰まったのは技術でもデザインでもありませんでした。要件定義です。一度固めたはずの要件が崩壊して、収拾がつかなくなった経験と、そこからどう立て直したかを書きます。
EC改修・立ち上げを担当している人、これから担当する人、そして転職面接で「EC改修の経験」をどう語るか悩んでいる人に参考になるはずです。
要件定義が「崩壊」するとはどういうことか
EC改修の経験がない人は「要件定義は最初に決めれば終わり」と思いがちです。実際は逆です。
要件定義とは「このECサイトで何をするか」を関係者全員で合意するプロセスです。ところが、合意したはずなのに後から崩れていく。これがEC改修の現場で最もよく起きる問題のひとつです。
何が起きたか
自社ECサイトのリニューアル改修プロジェクトを担当したとき、最初に関係者を集めて要件定義を行いました。やることを決めて、合意した。ここまでは順調でした。
ところが、プロジェクトが動き出すと問題が起きました。
経営層からの追加要求が止まらない。
「これもできる?」「あれもできるなら入れたい」という要望が次々に出てくる。一度合意したはずの要件に、どんどん積み上げられていく。
現場メンバーの解像度が上がるにつれて「やりたいこと」が増える。
最初は要件の解像度が低かったメンバーが、会議を重ねるたびに「実はこれもやりたい」「こういう機能があった方がいい」と後から湧いてくる。
結果、決めたはずの要件がどんどん膨らみ、完全に収拾がつかなくなりました。
なぜこうなるのか
EC改修プロジェクトで要件が膨張する理由は構造的です。
経営層は「できること」の全体像が見えていないため、開発が進むにつれて「こんなこともできるのか」と後から気づいて追加要求が来ます。
現場メンバーは実際に動いてみるまで「自分が何を必要としているか」が分からないため、会議を重ねるほど解像度が上がって要望が増えていきます。
これは担当者の能力の問題ではなく、プロジェクトの構造上、ほぼ必ず起きることです。知っておくかどうかで、対処できるかが変わります。
どう収拾をつけたか
やりたいことを切り捨て、やらなきゃいけないことに集中した
膨らんだ要件を整理するために、判断基準をひとつに絞りました。
「これがなければECとして機能しないか」
この基準をクリアするものだけを残して、それ以外は全部後回しにしました。「あったら便利」「できれば欲しい」という要件は、第2期以降に回す。優先度の判断を感情ではなく基準で行うことで、要件を絞り込めました。
経営層には「見た目」で対処した
正論を言っても伝わらないのが経営層です。システムの制約や工数の話をしても、「なんでできないの?」で終わることが多い。
そこで気づいたのは、経営層はフロント側の見た目しか見ていないという事実です。バックエンドの機能がどれだけ削られていても、画面の見た目が整っていれば「いい感じだね」になる。
これを逆手に取りました。フロントの見た目だけを優先して調整しながら、バックエンドの要件を静かに絞り込んでいく。経営層を敵に回さずに、プロジェクトを前に進める現実解でした。
EC改修で要件定義を崩壊させないための3つの対策
経験から得た教訓を整理します。
①「フェーズ分け」を最初から提案する
要件を全部第1期でやろうとするから崩壊します。最初から「第1期でやること・第2期以降に持ち越すこと」を明示して合意しておく。追加要求が来たときに「それは第2期ですね」と言える状態を作っておくことが重要です。
②「決定事項の議事録」を毎回取る
会議で合意したことを文書化して関係者に共有する。次の会議で「前回こう決めましたよね」と言える状態を作っておくことで、無制限の追加要求に歯止めをかけられます。
③経営層への報告は「見た目」で行う
プロジェクトの進捗を経営層に報告するとき、数字や工程の話より画面のビジュアルを見せる方が伝わります。「今こんな見た目になっています」という報告の方が、経営層の安心感につながります。
この経験が転職面接で活きた理由
EC改修の経験を面接で話すとき、「要件定義が崩壊した話」は非常に使いやすいエピソードです。
面接官が評価するのは「うまくいった話」だけではありません。**「問題が起きたとき、どう考えてどう動いたか」**のほうが、むしろ評価されます。
「経営層の追加要求で収拾がつかなくなったが、やらなきゃいけないことに絞り込んで、経営層には見た目で納得してもらいながらプロジェクトを完遂した」という話は、課題発見・判断・実行・ステークホルダー管理の全部が入っています。EC改修の上流を経験した人材として、マネージャークラスの評価につながります。
まとめ
自社EC改修で要件定義が崩壊する理由は構造的なものです。経営層も現場メンバーも、動き出すまで「本当に何が必要か」が分からない。これを前提として、フェーズ分け・議事録・見た目報告の3つで対処することが現実解です。
EC改修・立ち上げの経験を転職でどう活かすか、どのエージェントに相談すべきかはこちらの記事も参考にしてください。
→ EC・DtoC担当者の転職でおすすめのエージェント比較|10年現場で見た選び方
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