アパレル・専門メーカーで店長・エリアマネージャーを約10年やった後、社長から直接声をかけられてEC・通販事業部に異動しました。
最初に思ったのは「店舗の感覚はECに使える」という自信でした。実際にやってみると、その直感は正しかった。ECは小売の延長線上にあります。この記事では、店舗運営の経験がECでどう活きたか、そして転職市場でどう評価されるかを書きます。
店長時代:売上はスタッフで決まると知った
一番大変だったのは「スタッフのコントロール」
百貨店・ショッピングセンターで店長をやっていたとき、日々の売上を達成するために一番大変だったのはスタッフの管理でした。
売上は商品だけでは作れません。スタッフが動いて初めて売上になる。そのスタッフをどう動かすかが、店長の本質的な仕事でした。
具体的に難しかったのは3つです。
人間関係の調整:スタッフ同士の関係が悪いと、売場の雰囲気が悪くなり、お客さんに伝わります。誰と誰が合わないか、どこに摩擦があるかを把握して、日常的に調整し続けることが必要でした。
接客への動機づけ:スタッフ一人ひとりが積極的に接客に行くかどうかは、気持ちの問題です。目標を押し付けるだけでは動かない。個別面談・直接会話の機会を作り、一人ひとりと向き合うことで初めてスタッフが自分から動くようになりました。
シフト管理の公平さ:希望シフトの調整は、不公平感が出ると一気に雰囲気が悪くなります。誰が見ても納得できる基準を作って、均等に対応することが信頼の土台でした。
クレームで客先に行くのが2ヶ月に1回
百貨店ブランドの店長をやっていると、クレーム対応でお客さんの自宅に謝罪に行くことがあります。頻度は2ヶ月に1回ほど。お菓子を持って伺い、直接お詫びをする。これが当時の現実でした。
エンドユーザーと直接向き合うことを、10年間繰り返してきた。この経験が後にECで大きく活きることになります。
エリアマネージャー時代:「構造的に売れない店舗」をどう扱うか
複数店舗を同時に見る難しさ
エリアマネージャーになって一番変わったのは、複数店舗を同時に管理することの難しさです。店長時代は自分の店だけを見ていればよかった。エリアマネージャーは複数の店舗と店長を同時に管理しなければなりません。
業績が悪い店舗の立て直し
エリアマネージャーとして最も苦労したのが、業績が悪い店舗の立て直しです。
原因を調べると、多くの場合は立地・商圏の問題で構造的に売れない状況でした。どれだけ接客を磨いても、そもそも人が来ない立地では売上に限界があります。
このとき最初にやったのは、目標設定の見直しです。商圏の実態に合わせた現実的な目標に変更しました。達成不可能な目標を押し付け続けても、スタッフのモチベーションが下がるだけです。
結果として売上は大きく変わらなかった。しかし店舗の雰囲気は明らかに改善しました。達成できる目標に向かってスタッフが動けるようになったからです。
売上が変わらなくても、雰囲気を立て直すことが次のステップへの土台になる。これはエリアマネージャー時代に学んだ、数字だけでは見えない現実です。
ECへの異動:社長からの直接の声がけ
10年間の店舗・エリアマネジメント経験の後、社長から直接声をかけられてEC・通販事業部に異動しました。
そのときの正直な気持ちは「店舗の感覚はECに使える」という自信でした。お客さんを見てきた10年間が、形を変えてデジタルの世界でも通用するはずだという直感がありました。
ECは「小売の延長線」だと分かった
実際にEC業務をやってみて、最初の直感は正しかったと確信しました。ECは小売の延長線上にある。
表面上は全然違います。店舗は人が来て、顔を見て接客する。ECは画面越しで、お客さんの顔は見えない。でも本質は同じです。
お客さんが何を求めているか、何に迷っているか、なぜ買わないのかを理解する。
これが小売でも、ECでも、根本にある仕事です。
接客の感覚が広告・ページ改善に直結した
EC業務をやって「この感覚が役立った」と最も感じたのは、広告とページ改善の場面でした。
店舗で接客をしていると、お客さんがどこで迷うか・どこで興味を持つかが体で分かります。「この説明をするとお客さんの目が変わる」「ここで背中を押すと買う」という感覚です。
この感覚をECのページに転用しました。お客さんがどこで離脱するか・どこに疑問を持つかを考えながらページを設計する。広告のコピーを書くとき、どんな言葉がお客さんの心に刺さるかを考える。
店舗での接客経験がそのまま、ECのコンバージョン改善の視点になりました。
転職市場で「店舗経験×EC経験」が評価される理由
転職活動をして分かったのは、EC担当者として最も評価されるのはデジタルのスキルではないということです。
**評価されるのは「オンラインとオフラインの両方を分かっている人材」**です。
ECだけをやってきた人は市場に一定数います。一方、実店舗でエンドユーザーと直接向き合い、接客・スタッフ管理・売上管理を経験した上でECに移ってきた人材は少ない。
面接で聞かれたのも、店舗での経験でした。「エンドユーザーとどう向き合ってきたか」「現場の課題にどう対処したか」。デジタルの話ではなく、人と向き合ってきた経験を見られていました。
ECは結局、接客です。画面の向こうにいる人間の気持ちを理解することが、売上に直結します。その感覚を体で知っているかどうかが、EC担当者としての本質的な差になります。
小売・アパレル経験者がECに転職するときに持っていくべき「武器」
小売やアパレルからECに転職を考えているなら、以下の経験は必ず言語化して持っていくべきです。
エンドユーザーとの直接対応経験:クレーム対応・接客・ニーズのヒアリング。これがECのページ設計・広告・CRMに直結する武器になります。
数字管理の経験:日次・週次・月次の売上管理、目標設定と進捗管理。ECでも同じサイクルで数字を追います。
スタッフ・チームのマネジメント経験:人を通じて成果を出す経験は、ECでもチームを動かすマネージャーとして評価されます。
立地・商圏の分析経験:どこで売るかを判断する経験は、ECではどのモール・チャネルに注力するかの判断に転用できます。
これらの経験をEC転職の面接でどう伝えるか、どのエージェントに相談すべきかはこちらの記事も参考にしてください。
→ EC・DtoC担当者の転職でおすすめのエージェント比較|10年現場で見た選び方
この記事を書いた人
EC転職野郎
EC・DtoC歴10年以上。アパレル・消費財メーカーで、自社ECの立ち上げ・改修から楽天・Amazon・Yahoo!などモール多店舗運営、新規DtoCブランドの立ち上げまで現場で担当。店長・エリアマネージャーを経て通販事業部シニアマネージャー、その後消費財メーカーでDtoC新規事業のチームリーダー・ECプロモーションチーム担当課長。
社名は伏せていますが、現場で詰まったことや判断の中身は、できるだけリアルに書きます。


